オンラインで活動を行うにあたって、避けられない問題の一つとして、匿名と実名の問題があります。
ただし片手間な、もしくは適当な匿名/実名議論のほとんどは話が噛み合っていないので、前提となる「匿名」と「実名」について掘り下げを先にすべきだと思われます。
まず前提として、特に知見の無い人は匿名/実名は、どちらかを二択で選ばなければいけない(裏と表の様な)「定性的」な問題と捉えがちですが、匿名と実名はどれだけ匿名性が高いか、どれだけ実名性が高いか、といった「定量的」な問題だと考えます。
また重要なのは、匿名と実名は一般に対義語と思われがちですが、「右翼と左翼」がそうであるように、実は微妙に軸が異なります。
世界を上下に分けて下に味方するのが左翼、世界をウチとソトに分けてウチに味方するのが右翼 - モジログ
匿名性
ほとんどの文脈では、「匿名」という表現は、「匿名性」もしくは「匿名性が高い」という意味で用いられています。
ここでは匿名性(度)とは、
という意味だとしておきます。
匿名性が高い場合、発言Aと発言Bが同一人物の発言のふりをしていようと、実は違う人かもしれません。
匿名性が低い場合、発言Aを擁護する発言Bが実は同一人物の自演だということがバレてしまうかもしれません。
実名性
ここでは実名性(度)とは
という意味だとしておきます。
ある発言に付随するメタ情報(補完情報)や発言内容によって、発言者と実在する特定の人物との同一性が推し量れる場合、実名性が高いと言えます。
匿名性と実名性の不一致
一般に、実名性が高いと匿名性は低くなります。実在するある特定の人物へのリンク強度が高ければ、その人物をキーとして、発言者の同一性が確保されるからです。
しかし必ずしも、この2つは相互に比例したり、反比例したりするわけではありません。例えば、匿名性が低くとも実名性が低い場合があります。
予め登録したユーザ情報によってログインが必要な場での発言では、ユーザIDなどに一意性があり、かつ全ての発言がIDに紐づいている場合、匿名性は限りなくゼロに近くなります。
しかしこのような仕組みでは、2つ以上の発言の同一性がどれだけ高くなろうと、実在する人物へのリンク性は全く保証されません。
逆に発言に付随するメタ情報として本名を名乗っており、それが何らかの確認手段において保証されたものであっても、名前が「田中太郎」や「鈴木一郎」といったありふれた名前で同姓同名が多数いる場合などは、実名度がどれだけ高くとも、別の田中さんや別の鈴木さんへのなりすましが防げなければ、匿名性は高くなります。
ここまでの話をまとめると、匿名性と実名性は相反する対義語ではなく、ある程度の関連性がありながらも、必ずしも反対の性質を持つものではありません。
匿名性が問題となる場合、特定の文脈における同一性を重要視されるので、匿名性の対義は同一性(identity)になります。
また、実名性が実在する人物へのリンク性を問われるのであれば、実名(完全にリンク)の対義は仮名(非リンク)になります。
繰り返しになりますが、
「一般に、実名性が高いと匿名性は低くなります」は換言すると、
「一般に、仮名性が低いと同一性が高くなります」とも言えます。
「匿名性が低くとも実名性が低い場合があります」は換言すると、
「同一性が高くとも仮名性が高い場合があります」とも言えます。
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